ルイ・ヴィトンに見るサスティナビリティ
長田広美
9月2日、Louis Vuitton hommeの2021年 春夏コレクションが、オープン間近の東京国際クルーズターミナルで開催されました。
その現場で見られた、サスティナブルな取り組みのことを書いてみたいと思います。
LVMHも取り組むファッションのサスティナビリティ
まずはファッション業界でない方への予備知識として、ルイ・ヴィトンは、LVMHというフランス一の巨大ラグジュアリー企業グループの傘下にあります。
傘下といっても、グループ名にLVとついていることから分かる通り、母体ですね。
もともと、ルイヴィトングループというファッショングループがあり、そのグループと、こちらもラグジュアリーなビバレッジのグループであるモエ・ヘネシーグループが合併したことでこのLVMHグループができました。
ラグジュアリーグループ同士のマリアージュですから、よりラグジュアリー指数が増した感じですね。
ちなみに傘下のブランドは、ルイヴィトン、ディオール、フェンディ、セリーヌ、ロエベ、ジバンシイ、ダナ・キャラン、ブルガリ、ショーメ、デビアス、ウブロ、ゼニス、タグ・ホイヤー、ドン・ペリニオン、ヘネシー、ヴーヴクリコなどなど、あげるときりがないほど多くの豪華ラインナップで埋め尽くされています。
そのLVMHグループも、このところの持続可能社会に向けての世界の産業界の動きに合わせるように、サスティナビリティを重視した取り組みに力を入れています。
ファッション界のサスティナビリティの先駆者’ステラ・マッカートニー’
一番大きな人事では、昨年、ステラマッカートニーをグループのサスティナビリティ・アドバイザーとして迎い入れたこと。
ステラマッカートニーとは、自身の名前をブランド名に冠して、20年ほど前からパリコレで発表していますが、一貫して環境保護や生態系の維持を尊重した物作りをしているブランドです。
デザイナーご自身はあのビートルズのポールマッカートニーの娘さんです。ファッション業界では、サスティナブルファッションの旗手として有名です。
そのステラをサスティナビリティ・アドバイザーとして招き入れたと言うことで、LVMHの持続可能社会の実現に向けての取り組み姿勢を世に広く示したことになったわけです。
前置きが長くなりましたが、そんなLVMHを代表するブランドであるLouis Vuittonのコレクションが、実際のところどんな風にサスティナブルな取り組みをしているのか、とても興味を持って現場に参加しました。
シーズンレスがニューノーマルになる?
まずは、最初にコレクションサンプルを見たときに、あれ?これは春夏コレクションのはずだったけど、秋冬だったかしら?と迷うほどのシーズンレス。
春夏コレクションと、今まさにオンシーズンの秋冬コレクションが混在しているのです。
さらには、クリエイティブ ディレクターのヴァージル アズローが就任前の、マークジェイコブス時代のコレクションから共通するデザインモチーフが使われていたり、明らかにワンシーズンで終わるトレンドなんて関係ない、と言わんばかりのシーズンミックス。
これが何を意味しているのか。
かつてファッション界のコレクションサイクルは、
ーー敢えて、『かつて』と言ってみました。実際にはまだ旧来どおりのコレクションサイクルでのコレクション発表をしているブランドも多いですが、時代は確実にこちらの方へ向かっているのでーー
年明けから春先にニューヨーク、ミラノ、パリと順次行われる、その年の秋冬コレクションと、7月から9月に行われる翌年の春夏コレクションを中心にその中間にそれぞれ、もう一回ずつ、計年4回のコレクションのたびに、各ブランドから新作の発表が行われてきました。
普通に考えて、そんなに年に何回も新しいコレクションを作って、売り切れなかった服は一体どうしてるんだろう?って思うのが普通の感覚だと思います。どれだけの無駄を出してるんだろう?って思うのではないでしょうか?
作り出すクリエイターの方も大変です。
年4回、3ヶ月毎に、全く違うテーマで新しいデザインを生み出し続けること、それが本当に必要なことなのか、新作であることにどれだけの意味があるのか、そんな疑問が業界内部でも囁かれ始めたのはここ数年のことです。
それが、このSDGsの波と追い打ちをかけるようなコロナ禍で、変化は一気に加速した感があります。
いつのコレクションだっていい、気に入ったものを好きなように着れば。
そんな背景の中、今回のLouis Vuitton Hommeも、新作と今着る服とアーカイブに合わせられるデザインが入り混じったコレクションになったのでした。
いつのコレクションだっていい、気に入ったものを好きなように着れば。
そんなヴァージルのメッセージなのかもしれないと、勝手に感じておりました。
再生ウールが何ともクール!
もう一つ際立ったのは、再生ウール素材のアイテムがとても多かったことです。
めっちゃクールな、肩のしっかりしたクラシックテイラードのラインが、カラフルな色でたくさん出ていましたが、そのほとんどがリサイクルウール素材を使用したものでした。
そしてそれらリサイクルウール素材で作られた服にさりげなく付いていたエンプレムは、ビーズで出来たリサイクルマーク。このエンブレム、素敵でした。
今や、限りある資源を大量に使って無頓着に新しくファッション素材を作り続け、消費し続けるのはクールじゃない。
そんなメッセージをひしひしと感じました。
こうやって、これからはコレクションの世界にサステイナビリティが標準装備されていくんだなと、とても嬉しくなり、さすが世界一のLVMH!と拍手したくなりました。
もう一つのラグジュアリーファッショングループ『ケリング』も、、
ちなみに、LVMHと双璧である、もう一つのラグジュアリーファッショングループがケリンググループで、傘下には、グッチ、サンローラン、ヴォッテガベネタ、ブリオーニ、バレンシアガ、ブシュロン、ポメラートなどのブランドがあります。
実は、グッチがリサイクル素材でできたbagのラインを発表するなど、ケリングの方がサスティナブルな取り組みでは少し先行していた感があります。
LVMHがサスティナブルアドバイザーにステラマッカートニーを迎えた数ヶ月後、ケリングも社会活動で有名な女優のエマ・ワトソンを経営陣に迎え、こちらも話題になりました。
世の中は確実にシフトしていますね。
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