女ひとり
内野順子
こんばんは!福岡の葬儀司会者&終活カウンセラーの内野順子です。
あちらこちらで梅の花が開き、春の息吹が聞こえて来ています。我が家のラナンキュラスとチューリップも綺麗に咲いてます。 この季節になると必ず思い出すご葬儀があります。
それは90代のご婦人のご葬儀でした。戦後間もなくからタバコ店を併設した角打ち酒屋を亡くなられる直前まで経営。気が強い女丈夫でした。その時代、女が酔客を相手に商売するには気丈でなくては無理だったでしょう。
生涯独身で、晩年は甥御さんが細やかにお世話をされました。気の強い叔母さまとはしょっちゅう喧嘩もなさったそうですが「なぜか僕のことを一番可愛がってくれました」と甥御さんが振り返られ、忘れられない叔母さまの想い出を話してくださいました。 「負けず嫌いで男勝りな叔母でしたがね…15年ほど前かな、春のコートを買いたいと言うので、僕が車で連れて行ったんですよ」
鏡の前で試着する叔母さまが「どうかね?」と訊くので、甥御さんが「いいじゃないですか、とても似合ってますよ」と言うと、
「あの勝ち気な叔母が、まるで少女のように顔を赤らめて、嬉しそうに恥ずかしそうに笑ったんです。あんな叔母の顔を見るのは初めてでした」
帰りの車中でも、包装を解いて何度も嬉しそうにコートを見ていた叔母さまを、甥御さんはとても可愛らしいと思われたそうです。
お話を伺い、涙がこぼれそうになりました。90余年の人生、お店を畳もうとした時期もあったそうです。結婚のお話があったことも。けれど女ひとり、気丈に懸命に生きてきた叔母さまが垣間見せた女性としての素顔。
こんなお話を伺えるこの仕事は本当にありがたいです。人間っていいな、と思える瞬間です。
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