「外す」は新しい発見の始まり



2023.02.13
雨宮睦美


お菓子を買うにも「外したくない」

いやー。今年もきましたバレンタイン(1日早いけど)。リモートワーク時代を経て、義理チョコの習慣は不要不急と切り捨てられたことでしょう。本当に大切な人(自分含む)のためだけに、ちゃんと吟味して選んでこそ、チョコだってきっと喜びますよね。

さて、ある時期から、お菓子の新製品が売れない、と耳にするようになりました。定番ブランドから出る「新しいフレーバー」はヒットするのです。でも全く新しい知らないブランドだと、お客さんが手に取ってくれない。飲料も同じ。なぜかと思って話を聞くと、高校生も主婦も口をそろえて「だって、外したくないじゃないですか」と言うのです。

確かに、ここぞ、という大事な買い物で「外す」のは痛い。家とか車とか宝飾品だったら、事前に何度も下調べして、実際に見て、いろんな人の声も参考にするかもしれない。でも100~200円で買えるお菓子やドリンクだよ?食べたり飲んだりして体調を壊したり、不味さに耐えきれなかったり、なんていう品物は、日本の店頭に並ばないでしょう?

 

エンタメだって「外したくない」

これは映画やドラマ、アニメなどのコンテンツにも共通した問題で、「ヒット作の続編」とか「ベストセラー漫画の実写化」は売れるけど、まったくのオリジナル作品とか新しいものがなかなか苦戦するようです。

選んでくれないなら、送り手側もわざわざ賭けに出るより、リスクの少ないほうを取るでしょう。そうするとますます、「まったくの新しいもの」は世の中に出て行きづらくなる。

なんかそんなのって、つまらなくないですか。

 

たまには口コミをスルーしてみる

もちろん、安定の味、人気の世界を楽しむのはいいんだけど、なんだこれ?っていう見慣れないものが混ざっていてこそ、ワクワクすることってあります。手堅い選択、外さない買い物だけじゃなくて、たまにはレビューもランキングも無視して、自分が「なんかいいな」って感じたままに何かを選んでみると、想定外の収穫があるかもしれない。

自分の感覚を信じる訓練にもなるし、外したら外したで、いい話題ができたと思えばいいんじゃないかな。

私の日常はたいてい、そんな体験談でできています。

https://www.facebook.com/mutsumi.amemiya


雨宮睦美

マーケティングプランナー、モデレーター(インタビュアー)。 東京都出身。 1988年青山学院大学文学部卒業後、博報堂に入社しました。 国際業務局(4年間)、マーケティング局(8年間)の勤務を経て2000年に退職。 2001年に有限会社オルテンシアを設立し、前職の流れでマーケティング業務を請け負ってきました。食品、飲料、化粧品、自動車、通信機器等、様々なジャンルの企業のお仕事に携わっています。中でもインタビュー調査を得意とし、企業トップや大学教授、ジャーナリストや編集者等の有識者取材を始め、一般消費者へのグループインタビューやデプスインタビューなどで、これまでに話を聞いた人の数は、のべ数千人を超えます。


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