推しの時代の夢の国



2023.03.15
雨宮睦美


皆さまチップとデールってご存知でしょうか。リスです多分。私はどっちがチップでどっちがデールか識別できませんが、2匹セットで、服は着てなくて、茶色い、こういうやつ、とぼんやりと覚えている程度でした。
最近、とある20代の若者が「ぼく、チップ&デールが好きなんすよ」と言ったことがきっかけで、あーそんなのいたね、どんなんだっけ?と思い出したのです。
 
彼はディズニーランドが大好きで、何かにつけて家族や男友達と出かけて行くそうです。そして、開門と同時に一目散にショップを目指し、チップ&デールのグッズを物色するのが楽しみならしい。
 
友人の姪っ子ちゃん同じく20代は、年パスを持って頻繁に訪れているけど、ディズニーが好きすぎて浦安に住みたいそうです。もはやアトラクションには興味なく、ひたすらパレードを見続けているんだって。長年通っているから、ダンサーの名前も顔もいつしか覚え、誰々さん今日はどうだった、ということにも詳しいようです。
 
東京ディズニーランドの開園は1983年。そうか、今年40周年なんですね。
こんな私でさえ大学生の頃はよく行ったんだけど、例えばデートの行き先として、映画館かディズニーか、みたいな選択がありました。混んでいる中で何個アトラクションに乗れるか、何時間並ぶか、というのは出たとこ勝負で、待ちすぎて会話もなくなったり、帰り際は妙に不機嫌になったりしました。場の雰囲気を味わいに行っていた、とも言えるし、受け身だったとも言えるかもしれません。それまで「遊園地」しか知らなかったのに、突然「テーマパークだよ」と言われて、どうしていいのかよくわからん、という気持ちも少しありました。
 
ディズニーの夢の世界にもキャラクターにも、特別な思い入れはなかったし、私は子供も持たなかったので、年齢と共に自然に遠退いてしまいましたが、どうやら昔と比べて今はお客さんの楽しみ方が変わってきているようですね。
ディズニーでこれを見る、これをする、が先に来て、誰と行くかはあまり重要でないように見えます。いかに効率的に目的を果たすかが重要。
 
だから「推し」の存在が大事なんですね。
最初に登場した彼に、「チップ&デールのどこが好きなの?」と聞いたら、そもそも好きかどうかは最初全然関係なかったそうです。「もちろんディズニー全体が好きなんですけど、楽しむためには推しを作りたくて、でも皆と被らない方がいいじゃないすか。ミッキーやドナルドだと有名すぎる。かといってミニーちゃんやデイジーちゃんは女の子だし。プルートとどっちにするか迷ったんすけどね、最終的にチップとデールにしたんです」なるほどねー。そういう発想なんだねー。そして、推すことを決めてからどんどん好きになっていったのだとか。メンバーが多いアイドルなんかと同じなのかもね。そうやって自分の担当を決めてから、盛り上がっていく。ああ、写真をよく見ると鼻の色が2匹で違うわ。
 

雨宮睦美

マーケティングプランナー、モデレーター(インタビュアー)。 東京都出身。 1988年青山学院大学文学部卒業後、博報堂に入社しました。 国際業務局(4年間)、マーケティング局(8年間)の勤務を経て2000年に退職。 2001年に有限会社オルテンシアを設立し、前職の流れでマーケティング業務を請け負ってきました。食品、飲料、化粧品、自動車、通信機器等、様々なジャンルの企業のお仕事に携わっています。中でもインタビュー調査を得意とし、企業トップや大学教授、ジャーナリストや編集者等の有識者取材を始め、一般消費者へのグループインタビューやデプスインタビューなどで、これまでに話を聞いた人の数は、のべ数千人を超えます。


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