愛は寛容である



2023.03.16
雨宮睦美


ちょっと今回はいつもと違うブログになりそうです。

私はなんだかんだ実家から出るタイミングを逸してしまい、そうこうするうちに弟が結婚して独立し、父が若くして亡くなり、同居していた祖母も間もなく天寿を全うしました。気がつけば母と二人暮らしになっていたのです。

仲良し母娘ならいいですが、まーどうしてこうも違うかな、というくらい昔から母とは性格が合わなくて、緩衝材のにゃんこたちがいなければ、とっくに決裂していたのだと思います。多少の軋轢があっても、本当はもっと早くに家から出るべきでした。4年前、家のすぐそばのワンルームマンションを借りて、以来そこを仕事場にしつつ、平日は寝泊まりもすることで、かろうじて心の安静を保っていたんです。それが去年の暮れに、83歳の母は腰を痛めて突然動けなくなり、もとから悪かった脚(股関節)とあいまって、大変なことになってしまいました。

年末で実家に戻っていた私は、大晦日の朝の5時に携帯で起こされ、何事かと思って出ると、すぐ隣の部屋にいる母が「助けて!」と叫びます。ぎょっとして駆けつけたら、床に膝をついて、ベッドにもたれたまま「痛い、痛い、痛い!トイレに起きたらそれっきり、痛すぎて横になることができないの!救急車を呼んでちょうだい!●●病院まで運んで!」ええええええええ?今日は大晦日よ。救急車?そんな、行き先指定できないよ?行ってどうするの?治療なんかしてもらえないよ。痛み止め出してもらうくらいよ。大体横になれなかったら担架にも乗れないよね?2時間くらい押し問答して、どうにか救急車は思いとどまり、私が手を貸してなんとか仰向けにして、しのぎました。座っていれば平気らしいのですが、とにかく寝る態勢になれず、一度横になったら今度は起きることができない。年齢のせいかトイレが近いため、夜中に2度も3度も目を覚まして起きるので、もうほんとに大騒ぎなのです。

同じことが翌日元旦の朝も起こり、お願いだから電話かけてくるのやめて、私が2時間おきに起きて様子見に来るから!と言って、寝る前にお茶だのコーヒーだのをがぶ飲みして、自分もトイレに頻繁に起きることで対策することにしました(よいこの皆さんは真似しないように。体ガタガタになってあとあと大変です)。

どうにか正月をやり過ごし、三が日が明けたらすぐに●●病院へ連れて行き、そこで股関節の手術の予約を決め、腰痛の痛み止めももらいましたが、成人の日の連休に今度は「夜眠れないから少し横になりたい」といってソファで昼寝してしまった母。二度と起き上がれないわけです。私の力では起こすことができず、ソファから転がり落ちて床をごろごろのたうち回る姿を見て、弟にSOSの電話をかけました。その日また救急外来に連れて行ったのですが、痛み止めの坐薬で帰されるだけ。もうこれ、自宅で面倒見きれないし、私このままでは共倒れになります。

その後まあいろいろあって、民間の老人ホームのショートステイで預かってもらうことになり、2か月弱そこにお世話になりました。至れり尽くせりの環境で、最初嫌がっていた本人もご機嫌。ただ、「あれ食べたいから買ってきて」「家からこれ持ってきて」と次々にリクエストが来て、私はシモベのようにそれらを施設に届ける日々。どんなに頼んでも会議中に電話してくるし、言ったことは忘れるし、込み入った話をするとキレる。

そして施設から直接●●病院に送っていただいて、一昨日入院させ、昨日無事手術を終えました。ホームの荷物は義妹と私で引き払ってきて、まあしばらくは病院でおとなしくしててくれるかなーと思いきや、そんなわけないし。早速電話がかかってきました。術後の経過は順調である、それはよかったね、私はね、どうやら血管が丈夫なんですって。ああ、そうですか。ああああああああこの電話いつ終わるのー。面会禁止で会えないと言っても「荷物は届けてちょうだいよ、私にとってあれ(吸水パッド)はものすごく大事なの。買って持ってきて!」(前日私が買って届けたのが違うブランドで対応容量も違ってたことで、「もういい!」と激怒されたばかり)「いやだから3月忙しくて…」「だったら誰かに頼みなさいよ!」そこでブチっと電話を切られました。

体が思うように動かないとか、痛みがつらい、とか、かわいそうだなあという気持ちはもちろんあります。でもこっちにはこっちの生活があるということを、もう少し配慮してもらえないもんだろうか、と思うんだけど、思うだけむなしい。真っ向から文句を言ったところで、残念ながらまともに話し合うことも難しそうです。

介護ってこういうことなのかあ、と、いきなり直面することになりました。大人への階段じゃん!

そして、我が家には蓄えがないので、実家を売却することで何とかお金を工面して、改めて母にはどこかケアつきのホームを探そうと決めた矢先「私は、死ぬまで絶対に、自宅で暮らします!どこへも行きません」と高らかに宣言されたのですねえ。誰が世話するんだ。私はもう無理ですからね。

心配した周りの友達や先輩方から、励ましやエールをいただいて、仏教の教えなども紹介いただいて、ああ、人間にはやはり宗教が必要なんだなと、ひしひしと実感しています。

私はキリスト教教育で育ってきたので、今は聖書の言葉を読んで心を落ち着けています。だからといって状況が変わるわけではないけれど、何かそこから力を授けてもらえている気もする。

解脱したあかつきには、教祖になって布教活動しようかな、などと、おバカなことも考えながら、なんとかバランスを取っているのでした。さて明日、正しい吸水パッドを届けに行きます(買い直しました)。

愛は寛容であり、愛は情深い。また、ねたむことをしない。愛は高ぶらない、誇らない、 不作法をしない、自分の利益を求めない、いらだたない、恨みをいだかない。 不義を喜ばないで真理を喜ぶ。 そして、すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてを耐える。 愛はいつまでも絶えることがない。

コリント人への手紙 13章4節-

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雨宮睦美

マーケティングプランナー、モデレーター(インタビュアー)。 東京都出身。 1988年青山学院大学文学部卒業後、博報堂に入社しました。 国際業務局(4年間)、マーケティング局(8年間)の勤務を経て2000年に退職。 2001年に有限会社オルテンシアを設立し、前職の流れでマーケティング業務を請け負ってきました。食品、飲料、化粧品、自動車、通信機器等、様々なジャンルの企業のお仕事に携わっています。中でもインタビュー調査を得意とし、企業トップや大学教授、ジャーナリストや編集者等の有識者取材を始め、一般消費者へのグループインタビューやデプスインタビューなどで、これまでに話を聞いた人の数は、のべ数千人を超えます。


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