羊をめぐる冒険
雨宮睦美
子供の頃羊を食べモノだと思ったことはありませんでした。大人になってからもしばらくは「羊は食べるものではない。臭いが強いし肉が硬いのでやめたほうがよい」と言われて、素直に従っていたのです。インドカレー屋さんでマトンっていう選択はあったけど、ラムを食べるのはモンゴルの人や、北海道のジンギスカンくらいなのだと思っていたし、近所のスーパーで羊肉など売られていなかったし。
唐突ですが羊と言えば村上春樹の長編3作目、『羊をめぐる冒険』の刊行が1982年。この頃の村上春樹はまだ凄まじいバイオレンスなど表に出さず、ちょっとおとぎ話風の作品を(多分意識的に)書いていたんだと思います。ちなみに同じ年にウールマークのキャンペーンで「触ってごらん、ウールだよ」っていう名コピーが生まれていて、私にとって80年代は何となく「羊の時代」なんです。初めてギリシャでムサカを食べたのが1987年、さらに言えば世界を震撼させた『羊たちの沈黙 The Silence of the Lambs』が出たのが1988年(映画化は1991年)。
これから10年以上後に、羊肉のブームというのが起きたようで、BSE騒ぎで牛肉の入手が困難になったこともあって、ジンギスカンが一気に全国区になったのだそう。
今となっては家庭向けにも羊肉が販売され、レシピ本が出たり、ファミレスのメニューにまで登場するほど浸透しているとか。確かにラムっておいしい!と思う局面が増えてきています。子羊ちゃんごめんね。
羊に詳しい人のこんなコラムもありました。羊好きの消費者団体羊齧協会主席だって。
https://cuisine-kingdom.com/colum-sheep5/
さて何が言いたかったかというとですね、毎週食材を取り寄せているオイシックスで「シェパーズパイキット」というのがあったので、注文してみたのです。ついに家で羊を食べるんだわ!と思ってね。あらかじめ野菜は刻んであるし、ポテトはマッシュされているし、ホワイトソースも混ぜるだけになっていて、なんと便利!・・・だけどよくよくレシピを読んだら、羊は不在で、普通の牛豚合いびき肉がセットされていたんです。これじゃあシェパーズ(羊飼い)パイじゃないけど!
というわけで、今夜はそのなんちゃってシェパーズパイと、めったに使わないトマト缶で作ったトマトスープにオートミールと野菜を入れて、ちょっと洋風メニューになったのですが、なぜかそこに、もやしのゴマ和えをプラスしてしまうという。。。