趣味は何ですか①
雨宮睦美
仕事でインタビューする時、本題に入る前に、相手に簡単な自己紹介をしていただきます。ちょっとリラックスしてもらう意味もあるし、その方がどんな人なのか、知っておきたい気持ちもあります。クライアントから「時間ないからここはカットで」と言われることもありますが、そんなわずかな時間を惜しんでまで、得られるものはそうないと思っています。
そしてそれを30年くらい続けている中で、明らかに変わってきたと感じるのが、皆さんの「趣味」の答え方。
昔は、結構真剣なスポーツ競技者とか、「道」のつくおけいこごとの有段者とか、マニアックな映画ファンとか、1つでいいと言ってるのに2つも3つも「あ、あとあれも好きです」としゃべる人とか、いたんですが、平成の中頃でしょうか、2000年を過ぎて、いつしか「趣味は・・・食べることです」「食べ歩きです」「食べることが大好きです」っていう答えが増えてきました。下手したら数名いる参加者全員がそうだったりもします。
なんだよ!食べることを趣味とは言わないでしょうが!と、最初のうち私は面食らっていたものの、あまりに皆が「食べること」「食べること」と異口同音に言いだすので、もう世の中の流れには逆らえないや、はいはい、あなたの趣味は食べることね、はーい、と受け入れることにしました。でもね、「特にどんなジャンルがお好きですか?」と聞いて「激辛です」とか、「スイーツに目がなくて」と言ってくれればまだしも、「え?別になんでも」「特にこれといって」「普通においしければこだわりなく」なんて返されると、ちょっとムッとしてしまう自分がいます(結局受け入れられていない)。
実はこれ、「音楽が好きです」と答える人にも共通しています。私も音楽好きの端くれなので、自分が聴かないものや、知らないジャンルでも、興味を持ってお聞きするんですが、「オールジャンル、何でも聴きますね」などと言われるとカチンときてしまう(笑)。わざと「へええ、演歌も?クラシックも?」と問い質したりしてしまうのです。大人げないわ。
こういう「自称音楽なら何でも好き」な人は、「流行りのJポップなら何でも好き」と言ってるだけで、ロックやジャズ、ましてクラシック音楽なんてまず聴いたことがない、というのが私の見立てです。
で、食に話を戻すと、「おいしいものならなんでも」と言っている人は、本当は何が好きなのか、多分自分でもわかっていない。よく行くお店を聞くと大抵挙がる名前はコンビニとファミレス。いいんですよコンビニのこれが好き!っていうなら文句はないし、このファミレスのこのメニューが大好物というのも全然かまわない。ただ、よく食べているものも覚えていないのに「食べることが趣味」と言わないでほしいし、コンビニとファミレスに「食のすべてを代表させる」のはやめてほしい。
あれ、今回私が書こうとしたのはこういうことではなかったはずなんだけど、前段のつもりがエキサイトしてなんか長くなってきたので、続編を改めて書くことにします。