着物売るなら



2023.06.06
雨宮睦美


母が自分の母から譲り受けた和服を買い取ってもらうのだと言って、業者を呼びました。私とバイトちゃん(弊社にもう十数年来てくれているパートさん)も立ち会うことになり、予想外に時間を取られて、今日は半日それで終了。そして、和ダンス一杯に詰め込まれていた着物や帯の数々はほとんどが価値無しと査定され、辛うじて値がついたのは帯五点。それもまとめて2000円。に、にせんえん?
 
まあ想像はついたはずよね。査定のポイントは保存状態のよさと、有名作家の手になるなどブランドものであるかどうか、そしてデザインが現代に受けいられるかどうかだそうです。バッグなんかと同じですね。
 
あまりに落胆している母を見て、20代の若い査定員が、「本来ならこちらの値段がお付けできなかったものは引き取れないんですが、一山1000円ということで、特別にお買い取りします」となりました。さらに「あのー娘さん、何かテレホンカードとかブランド品とかお持ちではないですかね」と言うので、10年くらいつけてなかったカルティエの腕時計を持ってきたら、数万円の値段がついたので売ることに。
 
「カルティエも、人気なのはタンクかサントスなんですけどねえ、こちらはそれほど人気がないタイプでして…他にはないですかねえ」ないよそんなもの。ブランド品がほぼ家にないのだし、あるとしても資産価値なんてまるで無視して購入したものだから、なるほどこういう時に不利なのね。ふーん。
 
それにしても、おばあちゃんの着物、もっといいものもあったはずじゃないの?なんで普段着と羽織しかないの?帯留めもひとつもないけど、既に昔処分したの?と聞いたら母がなんて言ったかというと、「お掃除の人が知らないうちに少しずつ持ち出す、ってこともあるらしいのよ」…おいおい…
 
私が唯一持っていた一張羅は、桜と紅葉が両方描かれた華やかな柄で、「ああ、その訪問着は仕立て直して私が数回着たんですが」と言うと、査定員が速攻「小紋です。訪問着ではありません」「あ、そうなの」「全体に柄が広がっているのは小紋です。残念ながら小紋は訪問着より格が下がります」「…」この子は、バイトちゃんが「着たい」と言って引き取ってくれました。
 
まあ、タンスの中身が空っぽになったのと、私が成り行きで数万円ゲットしたのはよかったけどね、というお話でした。

雨宮睦美

マーケティングプランナー、モデレーター(インタビュアー)。 東京都出身。 1988年青山学院大学文学部卒業後、博報堂に入社しました。 国際業務局(4年間)、マーケティング局(8年間)の勤務を経て2000年に退職。 2001年に有限会社オルテンシアを設立し、前職の流れでマーケティング業務を請け負ってきました。食品、飲料、化粧品、自動車、通信機器等、様々なジャンルの企業のお仕事に携わっています。中でもインタビュー調査を得意とし、企業トップや大学教授、ジャーナリストや編集者等の有識者取材を始め、一般消費者へのグループインタビューやデプスインタビューなどで、これまでに話を聞いた人の数は、のべ数千人を超えます。


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