Like a virgin
雨宮睦美
厚木に通っていた時なので、あれは大学1年か2年の頃。キャンパス内で見知らぬ男性に「ミスコンに出ませんか」と声をかけられました。「出ません」と答えたのですが相手がしつこい。「これは普通のミスコンテストではなく、大学生らしさを評価するもので」とかなんとか、説明しながらずーっと後をついてきます。
どう考えてもミスコンに出る柄ではないので、華やかなお姉さんたちがたくさんいる中でなんで私なのか、つくづく怪しいなあと思いました。そのスカウトマンもどきは他大学の学生らしいのですが、簡単にキャンパスに入りこめてしまう当時のセキュリティも怖いし、大体ミスコンというのは出たい人が我こそは、と満を持して出るものなのではないだろうか?
結局「改めて話を聞いてもらいたい」ということで根負けして連絡先をもらったんだか、こちらが知らせたんだか、主催者から直接趣旨を説明するのを聞きに行きました。
正式名称はミスター&ミスキャンパス・コンテストだったかな。
人気のテレビ番組でアシスタントを務めていた人が初代のミスだったそうなんですけど、おぼろげにこんな感じの人だったっけ、という印象がある程度で、今となっては彼女を検索してもそんな経歴は見つからないし、ご本人はとっくに芸能界を引退していてよくわかりません。
行きがかり上、履歴書のようなものを書いて、プロフィール写真を撮って提出すると、後日、渋谷のどこかのビルに呼び出されました。
そこには何人か候補らしき女の子がいて、でもいわゆるキラキラした、ミスコン荒らし的な人はいない、はっきり言って地味な集団だったと思います。そして私たちは集団面接のようなものを受けることになり、アメリカの大統領制についてとか、イギリスの王室についてとか、いろいろ質問されるうちに、話が奇妙な方向に行きました。突然、「ミスター&ミスキャンパスのコンテストですから男性もいますし、皆さんには合宿に参加してもらいますが、絶対に間違いを起こしてはいけません」「男性も女性も、結婚するまでは清らかな体でいなくてはいけません」という注意が喚起されたのです。え?ナニコレ。いったいこのミスコンの目的はどこにあるのか、私たちには何が期待されているのか、ちっともわからないままランチになだれこみました。
親切なおばさまが一緒についてきて、ごちそうしてもらって、解散したらそれっきり。二度とお声がかからなかったので私は予選落ちということのようでした。すごーくホッとしました。マドンナの♪Like a virgin が、その後しばらくぐるぐる脳内を回っていたのをなつかしく思い出します。