さらばハイウェイ
雨宮睦美
小学校の終わり頃だったか、中学生になってからだったか、読んで衝撃を受けた小説の名前が『さらばハイウェイ』。
砂田弘さんという作家の児童文学作品です。児童文学っていうには世知辛すぎる内容で、細部は忘れてしまったけど、若いタクシー運転手が自分の起こした事故をきっかけに欠陥車の問題に気づき、告発しようとするも組織の壁に阻まれて、、、というようなお話でした。ハッピーエンドになりません。50年近く前の話なのに、古びて感じられないのは、世の中の構造があまり変わっていないからなのかもしれません。
思えばこの小説が、私が社会の歪や闇に関心を持つきっかけだったような気がします。自分がいじめられるとか叱られるとか窮地に追い込まれる、とかなら、「そんなことに負けてたまるか」と闘争心を燃やせばいいのですが、国の仕組みだの組織の論理だの、見知らぬ人の悪意だの、に対しては、私にできることなんてない、と無力感に苛まれるばかりです。だったら見ないふりをしていればいいのですが、どうしても気になってしまうことがある。
後年、山崎豊子の『沈まぬ太陽』に夢中になっていた頃は、私は会社で従業員組合の執行委員をやっていて、なんとか全組合員が幸せに働けるといいなあなんて思ったりしたのですが、当時、制作の大御所ディレクターに「おまえのそれは、無駄な正義感」と一刀両断されたこともありました。痛いところを突かれた気がしました。きれいごとだけで前には進めないし、上手に駆け引きしたり立ち回ったり、清濁併せ呑む覚悟がないとダメなんだなあ。政治家を目指したりするのはやめておこう(笑)。
さて、でもねえ、のほほんと暮らしていても、世の中のニュースを見ては腹が立って仕方ないことがあるんですよね。
昨日も和やかに仕事の打ち合わせをしていたのに、最近見た記事をふっと思い出してしまって、それはコロナ禍で増大したペット市場が、コロナの失速と共にシュリンクしているっていう内容で、なぜかというと「在宅時間が増えたから犬や猫でも飼おうかな」と思って飼い始めた人たちが、「また会社に戻ることになって飼いきれなくなって手放している」っていうんですよ。てっめーふざけんな、飼いきれなくなってってなんだよ!ああ?もう思いっきりガラ悪くなるもう一人の私。許せない。そんな奴らがいるとして、それを当たり前のように「・・・というわけでペット市場は横ばいである」とか書いてる奴も表出ろこのヤロウ!なのです。ペットはモノじゃない!
この怒りがよみがえってしまったものだから、会議室でつい。「もう、こんな人たちは簪でこう(謎のジェスチャー)。。。」「かんざし?」「かんざし?仕事人ですか?」「あ、そうです。ああ腹が立つ。吹き矢で吹くのもありですよね。ふっ(再び謎のジェスチャー)許せないじゃないですかっ!」
我に返って見渡すと、戸惑いながら困りながら、半笑いの皆さん。「あれ?なんかすみません、つい」
「雨宮さんて面白いですね」「え?ああ、いえその・・・」
不思議ですよね。簪なんて持ってないしもちろん吹き矢なんかできないし、そもそも『必殺仕事人』のドラマをまともに見たこともないんですけど、なぜこうなるんだろう。
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