野バト殺人事件



2023.02.26
雨宮睦美


見慣れぬ置き土産

朝家を出るときには、何の異変もありませんでした。昼前に戻ってきたら、家の前に何かが落ちている。

私は最初、強風でどこかの洗濯物が飛んできたのかなと思いました。赤っぽいような黒いような色の何か。でも近づいてみると、衣類ではありません。誰かが生ごみを捨てたのか。なんか生々しい鶏の骨みたいなのが出てるけど…

ああ、本当にそれは、骨だったんです。おそらく少し前まで生きていた鳥の、無残な亡骸から突き出た赤い骨。サイズ感と、周りに散乱しているグレイの羽から類推するに、鳩です。

なんで鳩の死骸がここに落ちているのでしょう。これは私が処分しないといけないんですかね。思考が停止したので、とりあえず何も見なかったことにして家に入り、次の予定のための支度をすることにしました。

 

容疑者は猫かカラスか

野性が残っている飼い猫は、よく狩りに出かけてネズミちゃんだの鳥ちゃんだの、その成果を誇らしげに飼い主に見せに来る、という話を聞いたことがありますが、うちの子に限ってそれは100%ない。室内から出たことは数えるほどしかないし、もう19歳で足もよろよろ。だとすると近所のノラかなあ。そもそも最近ほとんど見かけないけど。

となると犯人はカラスでしょうか。ごみ集積場にしょっちゅう出入りしていてガラが悪くて頭がいいあいつらなら、やりかねないなあ。鳩同士で共食いするとも思えないし。でもなんで私に見せに来る必要がある?

シロウト探偵にはこれ以上考えても無理だ、どうしよう、110番通報しようかしらバカかしら。

 

消えた亡骸

ところが!バイオリンを背負ってさてオーケストラの練習に出かけようと玄関を出たら、2時間前には確かにそこにあった亡骸が、きれいさっぱり消滅していたのです。

どういうこと?犯人が戻ってきて食べかけの食事を済ませたってこと?私がキャーとか言って大騒ぎすると思ったら反応が鈍かったから、面白くなくて別な場所に移動させた?見かねた近所の人が黙って掃除しに来てくれた?

うーん、まったくもってわからない。でも鳩が消えてしまった以上、もう通報も片付けも必要なくなったのはラッキーかしら。飛び散った羽はそのうち風に紛れていくだろうし、血痕はちょっと気味悪いけど、雨が降れば流れてしまうよね。

鳩さんは不運だったね。R.I.P.

https://www.facebook.com/mutsumi.amemiya


雨宮睦美

マーケティングプランナー、モデレーター(インタビュアー)。 東京都出身。 1988年青山学院大学文学部卒業後、博報堂に入社しました。 国際業務局(4年間)、マーケティング局(8年間)の勤務を経て2000年に退職。 2001年に有限会社オルテンシアを設立し、前職の流れでマーケティング業務を請け負ってきました。食品、飲料、化粧品、自動車、通信機器等、様々なジャンルの企業のお仕事に携わっています。中でもインタビュー調査を得意とし、企業トップや大学教授、ジャーナリストや編集者等の有識者取材を始め、一般消費者へのグループインタビューやデプスインタビューなどで、これまでに話を聞いた人の数は、のべ数千人を超えます。


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