香りの記憶



2023.02.27
雨宮睦美


 

イチゴの王様

私が生まれて初めて買った香水は、確かサンリオのイチゴのコロンで、ネット検索してみたところ、「ストロベリーキング」という名前でした。子供心に、そんなに素敵な匂いじゃないなあ、ボトルもチャチだし値段も安いし、これは本物じゃないんだなとわかってしまう程度の品でした。
 

香水シャンプー

中高時代はいい香りのシャンプーが大流行。朝シャンブームとあいまって、朝の通勤電車はきっと、チープな香料臭が充満して大変だったのではないかと思います。「恋コロン 髪にもコロン ヘアコロンシャンプーとリンス」なんて商品もありました。甘い香りとともに、このネーミングセンスはすごいなあと感心したことを覚えています。
 
あと、資生堂シャワーコロンっていうのが流行ってた。学校に持っていくと(校則ではダメだったはずだけど)、体育のあとなどに男子からも「貸して貸して」とニーズ大。当時の教室はエイトフォーとシャワーコロンと、それでは隠しきれない若者の匂いで臭かったはず。
 

バブルな香り

会社に入ってしばらくは、大手ブランドの新作香水が次々に発売されてヒットして、日本でフレグランスは売れないというジンクスを打破した時代。私は天の邪鬼なのであんまり流行ると欲しくなくなり、ちょっと外したものを買っていました。カルバンクラインも大人気でしたね。エタニティにエスケープにCKワン。メロンみたいなスイカみたいな香りがトレンドだった頃、これ系ユーザーはなぜか浴びるように使うので、甘すぎる香りをかいで気分が悪くなったことも何度かありました。「カブトムシ系」と揶揄する人もいましたね。
 
勤務地のそばに今は亡きプランタン銀座というおしゃれデパートがありました。そこに行くとどのフロアでも必ず、強烈に甘い独特な香りが漂っていて、密かに「プランタンの香り」と呼んでいたそれが、かの有名なプワゾンだった、とわかった時の私は、ヘレン・ケラーがWater!と叫んだときのような気持ちだったと思います。
 

男物フレグランスの盲点

メンズものを使うことにも一時は凝りました。爽やかな柑橘などで甘ったるくなくてよかったです。ただし問題があって、メンズの香水はしばらく経つとすごくおじさんぽい香りが出てきます。ラストノートが渋すぎるためです。
 
だから、メンズの香りの思い出は、元カレのつけていた匂いではなくて、自分がつけては「失敗した_!」と慌てた記憶に結び付いているのです。中ではブルガリがよかったかなあ。

どんどん薄い香りにシフト

 
30代頃までは、海外旅行に行くと現地でフレグランスを買って帰ることもよくしていました。でもそのうちだんだん、私は自分がつけた香水にも悪酔いするようになっていきます。頭痛や吐き気に繋がることも増えて、ある時手持ちの香水を一掃しました。以降はなるべく人工香料を使わないもの、自然なものを選ぶようになります。
 
アニックグタールのバラやレモンのトワレは愛用してきました。最近はJo Maloneも好きですがこれは値段が高すぎて気軽には買えません。香水じゃなくて、ハンドクリームとかボディローションがほのかに香る程度で十分だし、質の高いアロマオイルのほうがナチュラルでいい。
 
コロナ禍を経て、香りをつけること自体が稀になってきました。ただ一方で、大人の女性がティーンと同じような「せっけんの香り」をつけたりするのもちょっと変ですよね。おばさん臭くなく若作りでもなく、自分も周りも気分が悪くならないようないい香りを探すのは、永遠のテーマかもしれません。
 

雨宮睦美

マーケティングプランナー、モデレーター(インタビュアー)。 東京都出身。 1988年青山学院大学文学部卒業後、博報堂に入社しました。 国際業務局(4年間)、マーケティング局(8年間)の勤務を経て2000年に退職。 2001年に有限会社オルテンシアを設立し、前職の流れでマーケティング業務を請け負ってきました。食品、飲料、化粧品、自動車、通信機器等、様々なジャンルの企業のお仕事に携わっています。中でもインタビュー調査を得意とし、企業トップや大学教授、ジャーナリストや編集者等の有識者取材を始め、一般消費者へのグループインタビューやデプスインタビューなどで、これまでに話を聞いた人の数は、のべ数千人を超えます。


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