ほほえみの国の激辛
雨宮睦美
タイ料理との出合いは新入社員の頃。先輩たちに「お昼に行くよ」と連れていかれたのは、日比谷にあったチェンマイでした。ランチセットを何か頼んだと思うんですが、追加でトムヤムクンが鍋ごとオーダーされ、皆でシェアしていただきました。初めてトムヤムクンスープを口にした私は大感激。「おいしーい!」と大喜びで何度もおかわりしました。あとで先輩が「この子つまんない。ちっとも辛ーい!って言わない」と言われて我に返る。あ、そうなのか、これは何も知らない新人に、激辛の洗礼を与える場だったのか!と気づきましたが時すでに遅し。
世の中にはこんなに美味しい料理があったのか、ということと、私は辛いものがどうやら好きらしいことを、しっかり認識した経験でした。父によれば、バンコク駐在から戻ってすぐに結婚して私が生まれたので、何かが受け継がれているんだろうということ。
それからは家でもトムヤムクンやヤムウンセンなどを作るようになりました。次々にいろんなタイ料理店を食べ歩き、タイにもよく旅行に行きました。とはいえ訪れたエリアはバンコクとパタヤ程度なんですが、ここ数年は東北地方のイサーン料理が気に入っています。辛くて美味しいんだもん
タイの人はシャイで穏やかな印象だし、仏教の国なのに、なぜ食べ物はこんなに激しいのでしょう。ベトナムやラオスも美味しいけど、タイの味の複雑さ、奥深さには及ばない気がします。
たまたまラープ(挽き肉のサラダ)とチムチュム(ハーブ入り鍋)の合わせ調味料を見かけたので購入し、今夜はなんちゃってイサーンナイト。昼に作って食べてみたらさすがの私も「か、辛い」と思ったので、避難場所として辛くない卵焼きと焼売を足してみました。シューマイはタイ料理じゃないって?まあまあ。
余談ですが20数年前、ニューヨークへ行ったとき、日航ホテル(エセックスハウスをバブルに任せて買収していた頃)に宿泊し、朝ごはんで和定食をオーダーしたら、筑前煮の中に焼売が入っていて驚きました。
作りすぎてしまったため、土日もオケと仕事の合間に食べることになりそうです。