牛を使わないミルク
雨宮睦美
コロナ禍で仕事が全部キャンセルになった時、たまたま、とある会社の手伝いを頼まれて、渡りに船でしばらく半分そこの社員として働いていたとことがあります。それはそれで超~大変だった(ちょっと書けない)ので、社員の立場は放免してもらい、今は外部スタッフ的に少しだけ協力しています。
ここでの仕事で、私はそれまで全く知らなかった海外の最新食業界事情にすごく詳しくなってしまい、メーカーさん相手にセミナーで講師したりなんかもしたんですね。フードテックだの、プラントベース食品だの。知ったかぶりしてしゃべるのがインチキみたいで少し気が咎める部分もありつつ、この領域はまだあまり日本では進んでいないようなので、日々各国の業界ニュースを片っ端から読んでインプットし、それを発信するというのが、すごく新鮮で面白かったものです。
中でも結構注目のテーマが、この「牛を使わないミルク」。
肉もそうですが、動物愛護や温暖化対策、そして乳糖不耐症の人への配慮など、色々な観点から、「牛を使わないでミルクを作ること」は重要視されてきました。植物で代替するのがまずは第一歩。
代替ミルクと言えば少し前までは、単純に「豆乳でしょ?」で済んでいたものです。スタバなどのコーヒーチェーンでも「ソイラテ」は広く浸透していたし、好き嫌いは置いておくと、牛乳の代替品として筆頭でした。でも、大豆はクセも強いし、アレルギーもある、ということで、もっと他の植物性ミルクを、となったのでしょう、アメリカやヨーロッパ、いや世界各国で、次々にスタートアップ企業がプラントベース(植物性の)ミルクを開発し、巨額のお金が動き、市場を攪乱していきました。
先行したアーモンドミルクに代わって、今や植物性でトップを占めるのがオーツ麦のオーツミルクです。最近日本のスタバでもオーツミルクは基本メニューに記載されるようになりましたし、スーパーなどでもいろんなブランドが棚に並ぶようになってきました。もちろんその数はまだまだ全然欧米の比ではないのですけど。そして価格も高いので、なかなか一般化するには道程は遠いかなあと思いますが、ある日突然牛乳を受け付けなくなってしまった(小学校の給食6年間で、体がもういいや、と思ったらしい)私としては、クセがなくておいしいオーツミルクでカフェラテが飲めるのはとてもありがたいことなのです。
2022年現在、アメリカで発売されているミルクの15%は植物性、売上にして28億ドル(日本円で3800億円)という数字も出ています。
ところが、です。今やトレンドはその先へと進んでいます。それが、「牛を使わない、でも牛と同じタンパク質で作ったミルク」です。ん?どういうこと?
微生物を使った発酵によって、牛(や他の動物)を介在させずに、牛と全く同じ分子構造のタンパク質の生成が可能になっているそうです。ミルクだけでなく、チーズやバター、アイスクリームなどにも、この技術は応用されて、続々と商品化されています。これらの製品は、牛(や他の動物)を使っていないから、完全ビーガン品である、と主張してたりします。でも分子構造は牛と同じなんですよね?あれ?っていうことは、遺伝子組み換えて作っているということ?その辺は問題ないわけ?
果たして日本のスーパーにも、こうした製品が当たり前のように並ぶ日が来るのか、気になるところです。