紫のバラの人
雨宮睦美
紫色が好きです。パープル、バイオレット、ライラック、ラヴェンダー、モーブ、ピオニー・・・花の名前がついた色も多いです。私が社名につけた紫陽花も紫、って文字が入る。紫色は色見本を眺めているだけでも幸せな気持ちになってきます。まあ色見本は何色を眺めていても幸せなんですけど。
だけど子供の頃から、どこかでその好きな気持ちにブレーキをかけていました。「紫色はキチ●イの色」っていう刷り込みがあったせいです。いつどこで誰に言われたか定かではないけれど、好きだと公言してはいけない何か、があったんですねえ。改めて調べてみても、特にそんな言い伝え?は見当たらないので、ごく限定的に周りでそういう話になっていたのかもしれない。ひとつ思い当たることがあるとすれば、小学校の同級生、T君のお母さまが、いつでも全身紫づくめの服装で、確か薄紫色だったと思うんですが、洋服だけでなくバッグも靴も、帽子も同じ色だったような記憶があります。見かける機会とすれば参観日とか運動会とか、限られたタイミングだったはずだけど、子供心に、ちょっと異様なインパクトを与えていたのです。
だからなのか、紫系の服を着る時はちょっとドキドキして、でも上下紫の濃淡にしたり、羽織るものも同系色にしたり、色をそろえたくなってしまいます。私はT君のお母さんになりたいのか?
そして不思議なことに、着るものをブルー系で統一したり、グリーンでまとめたりしていても何も言われないのに、紫の日は複数の人から「あら、今日はパープルなのね」「紫なんですねえ」と声をかけられるのです。で、よせばいいのについ、「あ、そうなの。頭おかしい感じしますよね」なんて返したりするため、相手に「え?」と怪訝そうな顔をされてしまうのでした。堂々と紫を着こなす人になろう。