日傘をさす女
雨宮睦美
今日は日本全国荒れ模様のお天気です。線状降水帯なんていう単語、つい最近まで聞いたこともなかった。どうぞ皆さまご無事で。
6月は日本だと雨の季節ですが、ヨーロッパでは最も暑すぎず寒すぎず、晴れの日も多い、素敵なシーズンです。
南仏のカンヌで、5月の映画祭に続いて、6月には同じ会場で広告祭が開かれます。これはなかなかのビッグイベントで、お金はかかるし着くまで遠いし、大混雑もするのですが、世界のクリエイターたちが一堂に集うフェスティバルですから、彼らと同じ場所にいられるだけでもなんとも幸せな気持ちになります。私は出品したこともなければもちろん審査に加わったこともないのだけど、元の同僚たちがそのどちらでも活躍しているのを、頼もしくうれしく感じつつ、何度か「取材」名目で参加したことがありました。近隣ホテルが埋まっていて、展示会場まで徒歩20分くらいのホリデーインにやっとのことで部屋を見つけて、冷蔵庫もない部屋に1泊4万円払ったりしたなあ。なんかもう皆テンションがおかしくなっているのか、夜な夜なパーティー三昧で、深夜までビーチやプールサイドや屋外のバーで欧米人が大騒ぎしてたのもなつかしい。。。コロナ禍のため、昨年が数年ぶりのリアル開催だったと思います。
妻夫木君主演の映画『ジャッジ!』は、まさに海外の広告賞をめぐるドタバタ喜劇です。業界外の方も笑えると思いますので、興味ある方はチェックしてみてください。
さて、でも今回のテーマはカンヌ広告祭そのものではありません。めったに行けない南仏だから、空き時間を見つけてカンヌからちょっと電車で遠征したりした時のお話。ニースは断然洗練されていました。暑さの中、自力でシャガール美術館にたどり着けたときの達成感を今も覚えています。
そして、鷲の巣と呼ばれるエズ村。こちらはH堂の若者たちとグループで出かけたんだったかなあ。石造りの街を登って行って、絶景を楽しみました。
そう、その観光のさなかに、日本からの団体観光客の方々と一緒になったのですが、これがなんかとても衝撃的でした。なぜか。30代くらいの女性たちのご一行が、全員日傘をさしていたからです。皆さん確か長袖で足元はナチュラルストッキング。確かに南仏は紫外線も強いし、日差しをさえぎるものもない場所では太陽光がダイレクトに降り注ぎます。でもなんか不自然だし、もったいないよなあ、って思ったのです。日本以外の観光客はサングラスはしてるけど誰も日傘なんか持ってない。多分ストッキングもはいていない。
「美白」を考えたら、正しいのは彼女たちだし、私はそんな具合に意識が低いから、頬のシミが年々濃くなっていくんだよな、と自戒しつつ、観念して日傘を携行するようになったのはごく最近のことです。もう南仏に行くことはないだろうけど、もし今後そういう機会があったらどうするんだろう?日傘は持っていくのかしら。あ、そうだ、晴雨兼用の折り畳み傘がしばらく前から壊れてるんだ。だから今年は全然携行してないんだった。都内を歩くにもこれではいけませんね。