紅茶が飲めない女
雨宮睦美
ちゃんと調べたことはありませんが、なぜか「男性はコーヒーで、女性は紅茶を好む」イメージがあります。
コーヒーはタバコと共に、そして紅茶はケーキと共に、というイメージもあります。これらはスターバックスが上陸する前というか、昭和の日本的感覚かもしれません。
さて私自身はどうなのかというと、10代の頃からずっと紅茶派でした。あら珍しく女の子っぽい。
紅茶をいただく茶器にはまるで興味なかったのですが、ミルクティーが好きで「コーヒーは苦くて飲めない」と思い込んでいたのです。Tea, or Coffee?と聞かれる状況では間違いなくTea, pleaseと答えていました。
私が大学生の頃だったか、父がインドに単身赴任していて、お土産にたくさん買ってきてくれる現地の紅茶がとても楽しみだったこと。自分で初めて行った海外がイギリスで、向こうのおうちで淹れてもらった紅茶がティーバックなのにすごくおいしかったこと。マリアージュ・フレールとかレピシエ(ある日気づいたらルピシアに改名しててびっくりした)で店内にずらーっと並ぶ紅茶に目の色を変えていたこと。よい思い出がたくさんある紅茶でした。
ところが!そんな大好きだった紅茶が、いつしか飲めなくなっていたのです。
最初にあれ?と思ったのは会社の食堂(というか喫茶店)の紅茶。飲むとなんか気持ち悪くなるのです。精神的なことかなあ?特にアイスティーだと顕著で、好きで飲んでいるはずが、その後胃がむかつくようになってきます。ミルクを入れてあればまだましだけど、牛乳もだんだん受け付けなくなっていたし、植物性のクリームはそもそも気持ち悪い。
自分で理由を色々考えて、どうやら食後なら大丈夫だけど、空きっ腹に飲むとアウト、という法則を発見します。
そうなると、午前11時頃の打ち合わせなんて言うのが危険です。その後打ち合わせでお茶が出ることなどほぼなくなりましたが、20年くらい前だとまだ、そういう慣習は残っていて、でも喫茶店から取ることはなくなっていて、よく出てきたのはペットボトル入りの「午後の紅茶」でした。多くの人が好んで飲んでいる間違いのない選択なのでしょうが、私はやはり「うっ」と来てしまうので、飲めない。もともと大好きだった紅茶なので、何度も試してみたものの、最後には自分で淹れたお茶で気持ち悪くなったことで、やめる決意ができました。
そして紅茶が飲めなくなるのと時を同じくして、コーヒーの飲まず嫌いが克服されていきました。なんだ、おいしいじゃない。不思議なことに、紅茶だとダメなのに、コーヒーはブラックを空腹時に飲んでも平気なのです。ってことはカフェインのせいではなさそうだ。
ウーロン茶系もちょっと苦手になってきたことから、もしかして、犯人はタンニン(韻を踏んだのは偶然)なのでは?という結論にたどり着きました。あ!ワインを飲むと悪酔いするっていうのも、もしかしてこれ?・・・そうなんです。赤ワインをやめて白だけにしたら、その後全然悪酔いする問題がなくなったのです。
それがわかってから、ほぼ紅茶も赤ワインも口にしていません。たまーに、空腹じゃないとき、こっそり少量飲んでみる程度にしています。中国茶もプーアールは食事の時限定にして、選べるときはジャスミン茶に。
紅茶が飲めなくてもそんなに困ることはないのですが、仕事で一度、女性だけが参加するワークショップ、というのに出たときに、休憩時に用意されていたのが紅茶オンリーだったときは、少しだけ動揺しました。よかれと思って、わざわざそうなっていたのにね。さらにその時一緒に登場したのは焼き菓子!ああああ、私のもう一つの苦手分野。
やっぱり紅茶は女子の飲み物、っていう共通認識があったのですね。気分は「女子の園に迷い込んだオッサン」でした。