最強のサイコパス
雨宮睦美
私はかつて文学少女だったのですが、いつの間にか海外ミステリ、サスペンス、ホラー、ハードボイルド…よくジャンル分けがわかりませんけど、とにかくそういう小説ばかり原書で読むようになっていました。紙の本から電子書籍に移行して、それも電車の中でしか読まなくなって、さらには電車に乗ることがなくなったこの数年間で、本当に読書から遠ざかってしまったと思います。
読んでない間に好きな作家たちの新作もたくさん出ていたので、ちょっとこれからは読書時間をまた確保して、読む習慣を取り戻そうかなあと思います。活字中毒でネットニュースだろうが仕事の資料だろうが、何でも読むのは楽しいですが、小説の喜びはまたそれとは違うんですよね。
今回ご紹介するHarlan Cobenは、「ある日突然大切な人がいなくなる」シチュエーションだけで何作も書くという人だったんですが、私はたまたまどこかでペーパーブックを手に取って以来、すっかりファンになりました。日本では知る人ぞ知る存在だったのが、今では翻訳本も多く出て、かなり知れ渡ってきました。世界で7500万部以上売れ、43カ国語に翻訳されているんだとか。そしてもっとわかりやすいところでいうと、Netflixが契約を結んだそうで、彼の作品が続々映像化されているようです。
最も有名なのはスポーツエージェントのMyron Bolitar(マイロン・ボライター)シリーズ。将来を嘱望されたプロバスケットプレイヤーでありながら、大けがでキャリアを絶たれてしまったマイロンが、スポーツエージェントとして活動していくうちにいろんな事件に巻き込まれていきます。大柄で人のよいマイロンと、美女とのロマンスの行方も気になりつつ、脇役たちがまた個性的。彼の子供の頃からの大親友、Win(ウィン)は、金髪に青い目、容姿端麗、頭脳明晰な大富豪の御曹司で、いつもマイロンの窮地を救ってきたバディなわけですが、優男に見えて極めて凶暴で、その性格はほぼサイコパス。女性も大好きだけど真剣な交際とか心のふれあいには全く興味なく、近づかないほうがいいタイプの男性です。
マイロンもウィンも、シリーズ開始当初は若い青年だったのが、だんだん年を取ってきて、おそらく今50代。金髪のウィンは白髪交じりになって、多分かなり薄くもなっていると思われます。スピンオフでマイロンの甥っ子が主人公のミッキーシリーズ3部作なんていうのも出ています。フィクションだとわかっているのに、同世代の老けていく様には感慨深いものがありますね。
さて、前置きが長くなりましたが、マイロンシリーズ最新作は、このサイコパス男、ウィンを主役に据えたスピンオフのミステリー、その名も『WIN』です。殺人事件、盗まれた絵画、昔の忌まわしい出来事・・・とか言って私もまだ買ったまま読めていないので、まずはここから読書の旅を再開しようかと思っています。