一枚の写真



2023.03.04
内野順子


こんばんは!福岡の葬儀司会者&終活カウンセラーの内野順子です。

ご葬儀が閉式し、最期のお別れの時、故人様のご遺品をお棺の中に入れることは多いですが、金属やプラスチック製のものは燃え残ってしまうため、愛用の杖やメガネなども入れることが出来ないことがあり、お気の毒に感じることがあります。

ある日のこと、20代後半くらいのお孫さんから「写真を入れてもいいですか?」と尋ねられました。故人さまを囲んで、孫やひ孫と写った写真を入れたいとおっしゃるので「いいですよ」と申し上げたところ、ご親族から「待った」がかかりました。

「写真は入れるもんじゃなか」

生きている人の写真は入れてはいけない、という通説があります。あの世に呼ばれてしまう、という言い伝えがあるんですね。お孫さんはご親族の長老の方々に諭され、写真は入れない、ということになりました。 最期のお別れの時、皆さんでお棺を囲み、お花を手向けていかれていました。みんなから愛されていたお祖父様。ふとお孫さんを見ると、写真を持って頼るような目で私の方をご覧になっていました。

私はお花をいくつか纏めて束にし、お孫さんに渡して小声で、

「写真を入れるならこのお花と一緒にどうぞ」

と申し上げました。お孫さんは一瞬驚いた顔をされましたが、笑って頷かれ、お花の中に写真をそっと潜ませてお棺の中に手向けられました。

人それぞれいろいろな考え方があります。それを否定はしません。が、私は「故人様は愛する人たちの幸せを願いこそすれ、決して連れて行ったりはしない」と思います。

あの世というのがあるならば、そこで懐かしい人たちの写真を見ながら、遺して来た人たちに想いを馳せ、守ってくださるのではないでしょうか。

 

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内野順子

大学在学中にアナウンスサークルに所属しブライダル・イベントの司会を始める。 以来、約8,000件の披露宴、約1,000件のイベントで司会を務める。 40代から葬儀司会に携わり、現在年間250件以上の葬儀司会に加えイベントも務めるマルチ司会者として活動中。 葬儀では、温かな司会をモットーとし,終活カウンセラーとしても活動、司法書士や行政書士などとコラボし、セミナーを定期的に開催。 2022年4月、葬儀で垣間見る家族や友人らとの心温まるエピソードを綴った著書「また、いつか。葬儀司会者が見た人生・愛・終活」を全国出版。 福岡県太宰府市在住。家族は28歳の長男。


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