貫禄がない!
雨宮睦美
ガウンでブランデーグラス
子供の頃、「大人の女」というのを初めて意識したのが、テレビで見た太地喜和子さんだった気がします。確か『白い巨塔』のドラマ化第一弾で、田宮五郎演じる財前の愛人役。「ごろうちゃ~ん」と言いながら、ネグリジェにガウンを羽織ってブランデーグラスをぐるぐる回している姿が、強烈に脳裏に焼き付きました。子供心に、何か見てはいけない背徳感を意識したんだと思います。
昔は、ある年齢になれば自然に大人の女になって、それなりの色気や貫禄がつくのだろうと漠然と私は思っていましたが、どうやらそれは勘違い。いっこうにそんな気配が自分には訪れない。確実に年は取っているのになぜだろう。
会社には泣く子も黙るベテランがいた
駆け出しの若手社員だった時代、会社のあちこちにベテランのおばさまたちが存在していて、その方たちには色気はさておき確かに貫禄や凄みがありました。役員や局長クラスのおじさまたちも、「〇〇ちゃん」とあしらわれて頭が上がらない。実際に人事を握っていると噂される人もいました。今風に言うなら「ラスボス」。もはや私は当時の彼女たちより年齢が上になってるのだけど、全くもって軽い。若く見えると言えば聞こえはいいですが、圧倒的に薄い、と感じます。
時をかける少女
でもそれ、私だけの問題ではなさそうです。だってね、『白い巨塔』当時の太地さんは、あの迫力でもって35歳かそこらなわけですよ。一方、今年35になる女優さんって、例えばガッキーとか戸田恵梨香とか吉高由里子の世代。熟女と呼ぶにはあまりに若すぎます。若すぎると言えば、石田ゆり子や原田知世がサザエのお母さん=フネさんより年上だなんて、時空がゆがんでいるとしか思えません。うむむ。平均寿命が延びた分、現代の女性はどんどん若くなっているのかな。この先私が貫禄を手にする時は、果たして来るのかな。