黒いドレスの女



2023.03.04
雨宮睦美


若い頃、黒い服が苦手でした。オシャレな黒づくめの人たちが街に大量に溢れていても、どう着たらよいものかわからず、私は大体パステルカラーなどの明るい色のものを好んでいました。たまに頑張って黒のワンピースなんか着て会社に行くと、「これからお葬式ですか、お疲れ様です」と神妙な顔で後輩に言われたりして。なんでしょうか、着なれないからそう見えちゃうのか、根本的に似合わないのか。確かに黒は私にとって、ほぼ冠婚葬祭でしか身につけない色なのでした。
 
後にオーケストラに入って、本番の衣装が「黒ブラウス+黒のロングボトム」と知ったときは、持ってないから慌てて買いにいきました。この頃から少しずつ「黒い服を買う、着る」機会が増えていき、気づけば今日なんか、頼まれてもいないのに上下真っ黒。大人になったということかしら。
 
今回は黒い服の持つ意味について、考えてみました。
 

喪に服す

文字通り亡くなった人への弔意を表す。そうだ、それこそ暁の寺へ行きそびれたとき、タイでは国王の1年間の服喪期間が明けた頃でした。国民は1年間喪服で過ごしたのか!

 

改まった場での装い

喪服以外の礼服、フォーマルウェアですね。オーケストラの衣装はこれ。リクルートスーツも黒いけど、就職活動本来の目的を考えたら、黒である必要はないですね。
 
 

黒子(ほくろじゃないよ)

イベントのスタッフなど、目立たないで裏方に徹するために。アートを職業にしている友人たちが、「作品に影響しないよう、黒しか着ない」と異口同音に語るのをカッコいいなあと思いました。その後彼女たちが黒以外も着るようになったのもまた、新境地に進んだのだなあと感じられて素敵です。
 
 

究極のオシャレ

無難だからではなくて、洗練の極みとしての黒。モードってやつです。『ティファニーで朝食を』のオードリー・ヘップバーンが着ていたリトルブラックドレスや、全盛期のコム・デ・ギャルソン。
 
 

カジュアルな選択

肩の力の抜けた普段着。日常にさらりと黒を採り入れられるようになれば上級者、というイメージですね。Tシャツとかクルーニットとか、冠婚葬祭やパーティーには似合わないもの。
 
 
心理学との絡みで、景気が悪いと黒が流行るとか、黒を選ぶ人は自信家だとか、黒をめぐっていろいろな説があるようですが、ネット検索していると「大人の女は黒を着てはいけない」という警告も発見。https://president.jp/articles/-/35524
 
顔色が悪く見えたり、シワやシミが目立ったりするとか、無意識に気分が抑圧されてしまうとか、マイナス点がいくつかあるそうです。
 
まあそういうことも踏まえつつ、気の向くまま好きな色を着るのが一番ですよね。

雨宮睦美

マーケティングプランナー、モデレーター(インタビュアー)。 東京都出身。 1988年青山学院大学文学部卒業後、博報堂に入社しました。 国際業務局(4年間)、マーケティング局(8年間)の勤務を経て2000年に退職。 2001年に有限会社オルテンシアを設立し、前職の流れでマーケティング業務を請け負ってきました。食品、飲料、化粧品、自動車、通信機器等、様々なジャンルの企業のお仕事に携わっています。中でもインタビュー調査を得意とし、企業トップや大学教授、ジャーナリストや編集者等の有識者取材を始め、一般消費者へのグループインタビューやデプスインタビューなどで、これまでに話を聞いた人の数は、のべ数千人を超えます。


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