四次元ポケット
雨宮睦美
冬生まれのせいか、寒いのはそれほど苦ではなく(もちろん雪国に住んだこともないから呑気な発言ができるだけです)、たくさん重ね着すればいいやと思っています。夏はどんなに脱いだって暑いので、そのほうがつらいと思っています。それでも、冷え込んでくると周りが「ヒートテック」だ「極暖」だと言い出して、ああ、確かにインナーやタイツが保温素材だと暖かいだろうな、便利だな、と思い、思っているうちに春が来ます。携帯用カイロも同じ。そうか、コートのポケットに忍ばせたりすればいいのだな、なるほどね、と思うだけで冬が過ぎていきます。なんで実装できないのか。
そもそも私は「あったら便利」なものを身に着けたり持ち歩く習慣がつかないんです。「ないと困る」必需品も時々忘れるのだから仕方ないでしょうか。パスモとかハンカチとかね。
今でこそ手指消毒は当たり前になってしまいましたが、ウェットティッシュや消毒ジェルを持ち歩く発想も全くなかった。骨付きチキンなんか食べちゃって手がベトベトになっていると、必ず気が利く人が周りにいて、ウェットティッシュを分け与えてくれるのです。いつも申し訳ない、ああ、私もこういうものを常に持っている人になろう、と誓っては、忘れてしまいます。
のどあめとかチョコとか、小さなお菓子をバッグに隠し持ち(別に隠してはいないのか)、自分だけじゃなくて周りに「どうぞ」と勧める友人もいます。いつももらってばっかりで悪いなあ、たまにはお返ししないと、とか思って、だけどそういう習慣がないために全く返せない私。ああ劣等感。なんでこうなの。
他にもあるよね、携帯用シミ抜きとか、ばんそうこうとか、ミニ裁縫セットとか、そそっかしいなら相応に準備しておくべきなのに、ない。でも誰かが必ず、差し出してくれる。ありがとうドラえもん。
不思議なのは、そんな彼女たちに限って、持ってるバッグが小さいわけですよ。まさに四次元につながっているとしか思えない。私のこの無駄に大きくて重いバッグは何。
結局いつも私は、こうした素晴らしい友人たちに助けてもらってばかりの、のび太なのでしょうか。
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