アンパンマンと鷹の爪
雨宮睦美
音楽家は深爪
2歳からピアノを弾いていて、大人になるとバイオリンも始めたため、私の手の爪はいつも短く切ってあります(この写真は別人のものですが、こんな感じ)。よく深爪してズキズキ痛みます。美容雑誌などでは「絶対に爪切りでバチバチ切ってはいけない」「ヤスリを使って形を整えましょう」とありますが、言うことを聞きません。白いところが見えてくると落ち着かないのです。
若い頃はそれでも、レッスンのない日に、そんな短い爪にマニキュアを塗ってみたりしたものです。マットな白なんか流行ったときもやってみたなあ。きれいに塗れなくてムラになってダメでした。
スッと長い指に爪も縦長だと、爪を伸ばさなくてもカッコいいですが、私は爪が小さくて、ちょっと楕円気味の丸型、両親指に至っては横長のミニかまぼこみたいなので、何も塗らなければ子供みたいだし、塗ったら塗ったで滑稽なだけ。
そのうちマニキュアは諦めることにしました。
かといって魔女のようにながーくしている方には恐怖を感じます。どうやって生活のアレコレをこなすのかも不思議だけど、とにかく怖い。凶器として使えそうな人もいますから。この写真くらいがギリギリ許容範囲かな。
アンパンマンおじさん登場
男性もいろんなケアをなさっていますね。名刺交換した相手の爪がピカピカに磨かれていることもあります。そういう時は無意識に自分の手をグーに握って爪を隠したりします。これは能ある鷹とは違う動きですね。
昔々、クライアントの男性でさくら色ピカピカに爪を仕上げている方がいました。頭髪やお顔もテカテカで、シャレのめしたアンパンマンみたいでしたが、羽振りは良さそうでした。普段私たちスタッフ職が宴席に呼ばれることはほとんどないのですが、その仕事はちょっと特別で、なんだかんだよく駆り出されてカラオケをデュエットしたりしました。某業界の、全国から集まる代表を取りまとめる事務局がお客さんだったのかな。アンパンマン氏がどういう位置付けだったか覚えてませんが、それなりの重要人物だったのでしょうか。こうしてみると実際のアンパンマンの手はグーだから、爪をいじってる場合ではないですね。
ある会食の場で、そのアンパンマンに、テーブルの下からメモを渡されたことがあります。電話番号が書いてあって、「うちの別荘に遊びに来なさい」ですよ。行くかよそんなもん。おっさん妻帯者が何やってんだよ!気持ち的にはテーブルひっくり返して叫びたいところでしたが、にっこり笑ってスルー。私が騒ぐことで扱いがなくなったりしても困る、という忖度が働いたんですよね。確か親しい先輩にだけ打ち明けたように思います。
幸いそのことで仕事がなくなったり嫌がらせをされることもなく、そういう意味ではアンパンマンは悪人ではなかったんでしょう。だけど頭もおでこも爪も光らせて、こっそり若いねーちゃん(当時)に色目を使って、過去にうまく行った経験があったのかしらね。
今そんなことしたら、即刻アウトですからね。あのアンパンマンおじさん、どうしているかなあ。