ちはやふる
雨宮睦美
粋なお菓子
「あられ十菓撰 カルタ百人一首」なるお菓子をいただきました。小さなお煎餅がひとつずつ包装されていて、それぞれに小倉百人一首の和歌が印字されています。表には下の句、つまりカルタの取り札の部分が記され、裏面にその一首全部(カルタの読み札)と番号と作者が載っています。こんな手の込んだお菓子は初めてです。
さらに、紙袋には全ての句がプリントされていて、箱の中には解説まで百首分ついているのです。食べながら眺めていると、同じ物もいくつかあるので、お煎餅は全部で100以上入っているようです。
百人一首好きの私にとっては堪らない仕掛けです。十種類の味バリエーションには、蜜がかかっていたりして甘いものも混ざっていますが、そのくらいは許せるというもの。
坊主めくり
改めてこう書いてみると変な名前だし変な遊びですが、小さい頃は坊主めくり専門。盛り上がるしシンプルに楽しかった。絵札をすべて裏にひっくり返して山にして、ひとり一枚ずつ引いていき、殿様(男性)ならそのまま手札にし、坊主(僧侶)だったら札をすべて没収されます。逆にお姫様(女性)が出たら、誰かから没収された場の札をすべてもらえるのです。山にした札が全部なくなったとき、持ち札が多かった人の勝ちです。だいたい、絶妙なタイミングで坊主が出てくるんですよね。
坊主は坊主なんだけど頭になんか被っている人=蝉丸がいて、それを坊主と見なすか殿様の仲間に入れるかが、微妙なラインでした。
むすめふさほせ
文字が読めるようになるといよいよカルタです。百人一首。意味はよくわからなくても、暗記してしまえば札が早くとれるようになります。全部覚えたなあ。今でも八割方諳じることができるはずです。
上の句の一文字目で決まる札が百のうちに七種類あって、その一文字目を並べたのが、むすめふさほせ。一文字聞いた瞬間に取りに行きます。
む:村雨の露もまだひぬまきの葉に 霧立ちのぼる秋の夕暮れ
す:住の江の岸による波よるさへや 夢の通ひ路人目よくらむ
め:めぐりあひて見しやそれともわかぬ間に 雲がくれにし夜半の月かな
ふ:吹くからに秋の草木のしをるれば むべ山風を嵐といふらむ
さ:さびしさに宿を立ち出て眺むれば いづこも同じ秋の夕暮れ
ほ:ほととぎす鳴きつる方を眺むれば ただ有明の月ぞ残れる
せ:瀬をはやみ岩にせかるる滝川の われても末にあはむとぞ思ふ
この「瀬をはやみ~」の句は好きですね。岩にせき止められて分かれてしまう急流がいつかまたどこかで合流するように、離ればなれになっても、いつか必ず私はあなたに会うのです。
文化系クラブでカルタ対決
高校時代、学内の各運動部が競い合うハンドボールだかバレーボールだかの大会があって、文化系のクラブでもそういうのをやるべきだ、という話が出たのでしょう。文系クラブ対抗百人一首大会が開催され、私は友人とモダンジャズ部の代表として出場しました。
当時はもちろん「ちはやふる」なんて漫画は生まれていなかったし、若者にとって百人一首はマイナーな遊びだったし、和歌は試験に出るのだけ覚える、って感じだったので、全部暗記していた私たちは結構強かったのですよ。何試合したか忘れたけど、決勝戦まで進んで、最後文芸部に敗れました。そりゃあ文芸部としたら負けるわけに行きませんよね。残念でした。
しかし百人一首の世界はほんとうに楽しい。あられのおかげで忘れていた興味がよみがえってきました!