風を防ぐ女
雨宮睦美
お年頃なのか、私はこの頃大層暑がりになりまして、なんかもう四六時中暑い暑いと唸っているのですが、エアコンには滅法弱いのです。それも風邪を引くとかお腹を壊すとかではなくて、顔や首に冷風を浴び続けると、顔面麻痺だの眼球麻痺だのを起こす始末。あーなんてめんどくさい体質。
今までそれで何度救急外来に駆け込んだり入院したりしたことか。片目が動かなくなってモノが二重に見えるのは、下手すると脳腫瘍か動脈瘤の恐れありなんだそうです。さんざんあちこち検査されて何だかわからず、「ウイルスが神経に入ったのかもね~」と言われて終わり、そのうちいつのまにか治る、というのを繰り返してきました。
そうなってしまうのを防ぐため、いつも外出には上着や巻き物を持参するよう気をつけているのですが、今日に限ってほんの近所だし、ちょっとランチするだけだし、と油断しました。案内された席はエアコン吹き出し口の真下。さ、さ、さむいよ。
少し我慢して座っていましたが、お店の人に頼んで吹き出し口から遠い席に移らせてもらい、それでもまだ結構冷えるなあ、と思っていたそのとき、左隣に大柄なお姉さんがやって来ました。
その人が席に着いた途端、全っ然寒くなくなったのですよ。助かった、凄い遮断力!しかも体温高いんだなこの人。むしろ体の左側が温かいわ!
定食をいただきながら、私の頭の中には「防風林」という単語が浮かんできました。林ではなく一本の木だけど。
難点は彼女が驚くほど早食いで、私より先に帰っていってしまったことですが、本当に助かりました。ありがとう。