歌う女
雨宮睦美
音楽が鳴っていると、それをなぞって口ずさみたくなります。知らないメロディーでも大体一度聴けば覚えるので、気に入ったフレーズに出合うと、いつまでも歌っている。気に入らなくても、脳裏にこびりつくと振り払うのに時間がかかります。オケの練習が終わると、駅までの帰り道に大抵なんか歌っている私。
まあ曲の旋律の場合は、周りに仲間もいるし、小声だし、歌いながら歩いていたとしても問題はないと思うんですけど、これが動物の鳴き声にも適用されるのです。
どこかの家の玄関先で犬が吠えてると、呼応して鳴いてしまう。向こうから猫が歩いてくるとンニャーと言って追いかけてしまう。ここまでは条件反射だとして、時々、オレオレ詐欺よろしく何者かになりすまして、眠っている犬に「くーん、くーん」とすり寄ってみたり、人の家の猫に猫として話しかけたり、もやめられません。相手が騙されてくれるとすごい達成感が味わえます。
さらに、犬猫にとどまらず、鳥もです。アー、アー、アーとカラスが鳴いてると返事したくなるし、最近あまり見かけなくなったけど鳩の独特のポーポポッポポーとか、夏と言えばセミ。ミンミンゼミ限定でどうしてもマネしてしまう。ミーンミンミンミーン、ミーンミンミンミンミンミーン。気づくと一緒に唱和していたりして、しかも変拍子のリズムがぴったり合った時の快感といったら。こうやって書いているとかなり危ない人なんですね私は。
これが「踊り」になると、何度見ても再現できないので、人間、向き不向きがあるってことだなあと思います。