黒いドレスの女
雨宮睦美
若い頃、黒い服が苦手でした。オシャレな黒づくめの人たちが街に大量に溢れていても、どう着たらよいものかわからず、私は大体パステルカラーなどの明るい色のものを好んでいました。たまに頑張って黒のワンピースなんか着て会社に行くと、「これからお葬式ですか、お疲れ様です」と神妙な顔で後輩に言われたりして。なんでしょうか、着なれないからそう見えちゃうのか、根本的に似合わないのか。確かに黒は私にとって、ほぼ冠婚葬祭でしか身につけない色なのでした。
後にオーケストラに入って、本番の衣装が「黒ブラウス+黒のロングボトム」と知ったときは、持ってないから慌てて買いにいきました。この頃から少しずつ「黒い服を買う、着る」機会が増えていき、気づけば今日なんか、頼まれてもいないのに上下真っ黒。大人になったということかしら。
今回は黒い服の持つ意味について、考えてみました。
喪に服す
文字通り亡くなった人への弔意を表す。そうだ、それこそ暁の寺へ行きそびれたとき、タイでは国王の1年間の服喪期間が明けた頃でした。国民は1年間喪服で過ごしたのか!
改まった場での装い
喪服以外の礼服、フォーマルウェアですね。オーケストラの衣装はこれ。リクルートスーツも黒いけど、就職活動本来の目的を考えたら、黒である必要はないですね。
黒子(ほくろじゃないよ)
イベントのスタッフなど、目立たないで裏方に徹するために。アートを職業にしている友人たちが、「作品に影響しないよう、黒しか着ない」と異口同音に語るのをカッコいいなあと思いました。その後彼女たちが黒以外も着るようになったのもまた、新境地に進んだのだなあと感じられて素敵です。
究極のオシャレ
無難だからではなくて、洗練の極みとしての黒。モードってやつです。『ティファニーで朝食を』のオードリー・ヘップバーンが着ていたリトルブラックドレスや、全盛期のコム・デ・ギャルソン。
カジュアルな選択
肩の力の抜けた普段着。日常にさらりと黒を採り入れられるようになれば上級者、というイメージですね。Tシャツとかクルーニットとか、冠婚葬祭やパーティーには似合わないもの。
心理学との絡みで、景気が悪いと黒が流行るとか、黒を選ぶ人は自信家だとか、黒をめぐっていろいろな説があるようですが、ネット検索していると「大人の女は黒を着てはいけない」という警告も発見。https://president.jp/articles/-/35524
顔色が悪く見えたり、シワやシミが目立ったりするとか、無意識に気分が抑圧されてしまうとか、マイナス点がいくつかあるそうです。
まあそういうことも踏まえつつ、気の向くまま好きな色を着るのが一番ですよね。