揺れる、まなざし
雨宮睦美
顔の印象を変える化粧の中でも、アイメイクの存在は大きいです。私はこれがとりわけ下手なので、メイクしたところで素顔の時とほとんど変化がないのですが、かといってメイクアップのプロにやってもらうと、よくて宝塚の男役、ともするとニューハーフの顔になります。髪が短かったときは、政治家のおばさんでこういう人いるよなあ、って仕上がりになりました。なんというか、男性が化粧してるような顔になってしまうのです。
結局、アイメイクしすぎてもしなさすぎても、なんだかねえ?ということならば、過ぎたるは及ばざるが如し、で、しなさすぎを選ぶわけですね。本当は、ちょうどよい頃合いというのがあるはずなんだけど。年齢的にも少しずつ顔がぼんやりしてきてるみたいだし。
何度も「練習しよう」と試みては挫折したのがアイライン。ペンシルもリキッドも色々買ってみたけど全然ダメです。「簡単にするする引ける!」とパッケージに書いてあるのになぜ??
唯一、「…」という形に点が連なったようなブラシで、スタンプを押すように描けるタイプが気に入ったのですが、これはあっという間に廃番になって、二度と買えなかった幻の製品ですね。私以外に需要がなかったのか。
アイシャドウは、よくわかんないから好きな色を適当に塗ってるだけなので、これもたぶん試験があったら落第間違いなしですが、濃い色を塗るとたちまちニューハーフになるのはわかっているため、薄い色でごまかしています。
あと問題は、まつげなのでした。
私がマスカラを使い始めたのは30近くなってからで、理由も「ついつい目を擦らないように」っていう低レベルのものです。マスカラを塗ってるのにゴシゴシ目を擦ると、目の周りがパンダのようになるので、我慢するためにわざわざ塗るのでした。やれロングタイプだボリュームタイプだ、やれウォータープルーフだお湯で落とせるだ、国産だフランスものだ、黒や茶色以外にも青や紫のカラーマスカラまで、いろんなバリエーションを試してきましたが、本来マスカラの目的がなんなのか、正しい塗り方がどう言うものか、実はよくわかってない。伏し目がちなキリンの長いまつ毛は素敵ですけれどね。
まつ毛を持ち上げるビューラーというのも自分で持っていたことは一度もなくて、プロがメイクしてくれた時と、演奏会の楽屋で呆れた友達が貸してくれた(使い方わからないのでやってくれました)時しか使用したことがありません。
我ながらひどいな。
それならつけまつ毛かしら?と、買ってみたこともあるのですが、どうにも全くつけられない。偽物のまつ毛を接着剤で目の際に貼りつける、というだけのことなのに。
さて、そんなに下手ならまつ毛はエクステするといい、という情報を得て、サロンに通ったこともあるのです。自分のまつ毛に人工毛を結んで増やしていくもので、これ考えた人も施術する人もすごいなと思います。
でもねー、試してはみたものの、常に人形のようにまつ毛ぱっちり!ってなってるのが自分で気持ち悪くて、特に朝起きてぼーっと鏡を見ると、私はまだ眠いのに、目元はすっかりお出かけモードになってるのも奇妙。ある時衝動的にお風呂で全部剥がしてしまいました。自分でうまくできない上に、お金をかけてやってもらってもイヤになっちゃうわけですから、もうあきらめたほうがいいんでしょうかね。
私たち世代がメイクを始めた頃は、肌にファンデーションを塗って、口紅を塗る、っていうのがメインで、眉毛もまつ毛も放置だったから…と、時代のせいにしようかと思ったけど、同世代できれいにアイメイクしている人はたーくさんいるので、言い訳にならないこともわかりました。こうなったらもう、カラーコンタクトでも入れるか。