一枚の写真
内野順子
こんばんは!福岡の葬儀司会者&終活カウンセラーの内野順子です。
ご葬儀が閉式し、最期のお別れの時、故人様のご遺品をお棺の中に入れることは多いですが、金属やプラスチック製のものは燃え残ってしまうため、愛用の杖やメガネなども入れることが出来ないことがあり、お気の毒に感じることがあります。
ある日のこと、20代後半くらいのお孫さんから「写真を入れてもいいですか?」と尋ねられました。故人さまを囲んで、孫やひ孫と写った写真を入れたいとおっしゃるので「いいですよ」と申し上げたところ、ご親族から「待った」がかかりました。
「写真は入れるもんじゃなか」
生きている人の写真は入れてはいけない、という通説があります。あの世に呼ばれてしまう、という言い伝えがあるんですね。お孫さんはご親族の長老の方々に諭され、写真は入れない、ということになりました。 最期のお別れの時、皆さんでお棺を囲み、お花を手向けていかれていました。みんなから愛されていたお祖父様。ふとお孫さんを見ると、写真を持って頼るような目で私の方をご覧になっていました。
私はお花をいくつか纏めて束にし、お孫さんに渡して小声で、
「写真を入れるならこのお花と一緒にどうぞ」
と申し上げました。お孫さんは一瞬驚いた顔をされましたが、笑って頷かれ、お花の中に写真をそっと潜ませてお棺の中に手向けられました。
人それぞれいろいろな考え方があります。それを否定はしません。が、私は「故人様は愛する人たちの幸せを願いこそすれ、決して連れて行ったりはしない」と思います。
あの世というのがあるならば、そこで懐かしい人たちの写真を見ながら、遺して来た人たちに想いを馳せ、守ってくださるのではないでしょうか。
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